ふと

気づけば、僕は暗い森の中に迷い込んでいて。

というのは嘘だけど。

ふと

振り返れば、そこには後続のランナーなんていなくて。

ふと

先をみやれば、ペースメーカーがなぜだか僕の遥か前を全力疾走していて。

ふと

左右を見れば、なぜだか沿道の応援団まで競い合うように走っていて。

ふと

見上げれば、遥か中空を、さっきまで後続集団にいた友人が翔び交っていて。

ふと

感傷的になれば、「そんな暇はないぞ」とばかりに

タイムラップを僕に向かってチカチカと表示する先導車が現れて。

ふと

気づけば明日は妹の誕生日だった

「メール送らなきゃ」


一気にクールダウンした頭に以下のような疑問が思い浮かぶ。


「はて?もう42.195kmを走り終えたはずなのに。なんで走ってるんだ?」

「そういや、このレースは『マラソン』じゃなくて、『競歩』だったような」

「でも、競歩だったらオレ、とっくに失格じゃん?」

自嘲気味に呟いて

しばし、考え込む。せわしなく足を運びながらも。

んで、気づいた。


「あぁ、この競技って、トライアスロンだったんだ」

「走りきった後に、自転車乗って、海で泳いで…」

でも、ここで新しい疑問が。

「って逆じゃね?順番。普通、水泳⇒自転車⇒マラソンの順なのに」


栄光のゴールを切ったつもりが、レースの仕切り直しを強いられるみたいにして

僕はスタートラインへと引き戻されていく。

うーんうーん。

このレースにルールがあるのかどうかも怪しいけれど

確実なことが一点だけ。

どうやらレースはまだ終わってないらしい。

むしろ、まだまだ序盤戦といった様相。



もうクライマックスを迎えてしまったつもりでいる自分は

どこまで走りきれるのかな。

とにもかくにも、孤独なレースは続いてく

わおぉミスチルだ。