頭をちぎりたい

不意にそんな衝動に駆られることがある。
というのも、僕は重度の偏頭痛もちだから。
別にイスラム原理主義者ではありません。
ご心配なく。


さかのぼること10数年前、幼稚園時代から
たびたび、偏頭痛に襲われることがあった。

朝起きると、筆舌に尽くしがたい鈍痛が目の奥で
ジンジンと疼いている。
経験したことのない人には分かってもらえないと思うけど、
この痛みは尋常じゃない。
風邪を引いたときの、どこかぼんやりとした拡散した痛みの感覚とは
根本的に異なってるわけ。

目が覚めて、自分の頭にいつも以上の重量感が
感じられる朝。
当然、起き上がるのが億劫になる。
立ち上がれば、ただでさえひどい頭痛が、ますますひどくなることが分かってるから。

偏頭痛の困った点は、身体の外面にはっきりとした症状が
顕れるわけではないので、周囲に理解してもらいがたいことだ。
風邪を引いたときみたいに、身体が熱っぽいわけでもない。
咳がひどいわけでもない。鼻水が出るわけでもない。

ただただ、頭が痛いだけなんだ。
まるで、身体全体の不調をかきあつめて、
放り込んだみたいに、痛みが先鋭化して頭部を襲う。

しかも、さらに悪いことには、
その痛みは全て自分で引き受けるしかない。
周囲は勿論、同情なんてしてくれない。
なんせ、先ほど述べたように、
「ワタシ、病気なんです」的な身体の異変を、
見て取ることが全くできないから。

痛みを全て自分で引き受けるとはそういうことだ。

僕の「頭痛草創期」には、母たちも仮病を疑ったらしく
布団をひっぺがしてでも、起こそうとした。

運良く、病欠を勝ち取ったとしても、
自分の抱える痛みに誰も共感してくれない
という孤独感と共に一日を過ごすことになる。



そんな、孤独に今日もまた襲われた。
いつもと違って、変調は昼過ぎに突然訪れた。
「なんだか、頭が重いナァ」程度の感覚で済んだのは
つかの間。
あっという間に、それは重力を増して頭全体を覆い始める。
痛みのピーク時には目を開けていられなかった。

ゼミの時間にずっとこめかみを押さえて目をつぶっている僕。
傍から見たらたしかに、居眠りしてるようにしか見えないわな笑

案の定、ゼミが終わったあと、口々に
「爆睡だったねー笑」なんて軽口を叩いてくる友人たち。

ファック!
お前らなんかに俺の痛みが分かってたまるか!!

そんな内心の激昂はおくびにも出さずに、
トイレに直行。

頭痛だけにとどまらず、吐き気を催し始めたからだ。
ところが、もどそうにも最後にモノを口にしたのは9時間前。
出てくるのは胃液ばかり。
「あぁ、なんだか俺、ビョーキっぽい」
なんて思って、なぜかちょっとうれしくなる。

なんだか、「俺、今日は体調悪いんだ」って言うための
大義名分を得た気分になったからか。

飲みの誘いを断って、即効で帰宅。
バファリンを2錠飲み下すと、MI2を見ながらまどろみの海へ。
起きて、今に至る。

頭の中の重しは、きれいさっぱりなくなった。

この重し、いつか完全に再発することなく
消え去ってくれるんだろーか。

ふと、不安になる。

いや、痛みにはなんとか耐えられるし、
それなりに対処法も見出してきたつもりだ。

それ以上に、自分の苦しみを分かってもらえないっていう
孤独感をまた味わうのが、イヤだ。


「どーせお前、分かってくれないんでしょ」
偏頭痛と闘ってる日の僕はいつも、とげとげしい。
口数は劇的に少なくなるし、ときに自分でも思ってもみなかった
ことを軽はずみに口にしてしまう。

こういう態度が、ますます孤独を加速させる。


これぞ、孤独のデフレスパイラル

って言ったら何か寂しいコみたいだな笑

まぁ、そんだけ悩みは深いということで、また寝る!