I can’t stand it

所属している研究所のプロフィール集に掲載する
文章を書いていて、ふと考え込んでしまったことがある。
よくある、「好きなもの」とか「将来の自分」といった
質問項目にはすらすらと言葉が出てくるんだけど、
「嫌いなもの」の項目にまでたどり着いたとき、
筆が止まった。

はて、嫌いなもの?
なんだろう??
たしかに苦手なものは沢山あるけど、
それに大して嫌悪感みたいなものが伴うことは
ほとんどない。
「無口なヒト」「40代以上のおじさん」「三田のラパウザの店員」
どれも、苦手だけど、「嫌い」という感情にまでは至らない。

そんなことを、ぼんやりと考えていたとき、
突然、「嫌いなもの」が思い浮かんだ。

それは、オヤジのくしゃみだ。
実家暮らしをしていた頃、夜10時くらいまで
のんびりとTVを観ながらリビングで時を過ごすのだが、
オヤジが帰宅すると状況は一変する。

うちのオヤジ、とにかくやかましい。
180以上の長身で、かなりどっしりとした体格をしているのだが、
声が大きいのは勿論、彼の行動の逐一が必ず大きな音を伴う。
椅子を引く音、ビールがなみなみ注がれたグラスをテーブルに置く音、
そして、なんといっても最悪なのが「くしゃみ」だ。

こちとら、すっかりくつろいでいるところだというのに、
突然地を揺るがすような大きな音を立ててくしゃみされると、
とにかくビビる。

冗談でなく、オヤジのくしゃみは当時の僕にとっては
耐え難い苦痛を与えるものだった。

堂々とオヤジに刃向かうことのできない歯がゆさ。
怒られる、と思って一瞬萎縮してしまった自分への苛立ち。

様々なネガティブな感情を運んでくる「オヤジのくしゃみ」。

でも、最近そんな親父のくしゃみが妙に懐かしく感じられる。

そういえば、父の日からもう一週間が経ってしまった。
何かメッセージでも送ろうかと思っていたのだけど、
なんだか照れくさくて何もしてあげられなかった。

親父は、子供が三人もいればなにかしら父の日のプレゼントを
もらえるだろうと予測していたらしいのだが、今年に限っては
姉も妹もすっかり忘れていたらしい。

その腹いせだろうか。親父が自分で自分を祝うために
パソコンを購入したらしい。
曰く、「みなさん、その分節約してください」だと。

大人げねー。
一週間遅れだけど、何かメッセージを送ろうと思う。
みたいな模範的な結びにはしたくないので、
せめて、夏休みには帰省して
あの不快極まりない「親父のくしゃみ」を聞いてやろうと思う。

結構いい話になったでしょう?